カテゴリー: 文-現実-


- 真昼の昼寝の夢 - Act.3

右手に持っていたケースが歪んでいた。
二パーツのケースは半分ずつに分かれることで開くのは常識だが、その歪みにより捻れて開いていた。
慌てて二つのパーツを合わせもう一度閉じ込めようとする。
しかし、内部から…、右手の握力55kgの俺が押さえてもびくともしない圧力が掛けられていた。
片方のパーツが透明でありもう片方が青のスケルトンだったそのケースの透明の部分からみえた中にいるヤツの容姿は、変わり果てていた。
薄紫色の大量の触手がすごい密度で広がっていた。
見た目は洋菓子の一部で使われそうなムースみたいな模様であり細さだった。
ところどころに紫色の斑点があり一本一本の細さは直径1mmあるかないかの太さだった。
それがぐるぐると蠢きながら、心臓とシンクロするかのように脈打ちながらさらに密度と体積を増してくる。
ケースを押さえることにもう意味は無いが俺は必死で押さえようとした。
その触手がケースから外に出てくる。
元の姿など無く、今はただ薄紫色の大量の触手が蠢き広がっているだけ。
そしてケースを押さえていた両手の内右手の指に、触手が触れた。
ペタッ、っとまるでどんまい、と優しく声を掛けてくれながら肩を叩くような感じで、触れた。
次の瞬間、指に、目に見えない原子サイズの針が何億本と刺さった。
クラゲに刺されるような感覚だろうか。刺されたことはないのでわからないが…。
ちょっと静電気を含んだ毛糸の服に手をかざしたときのモワーッとした言い表せないあの違和感のような感触で針を刺してきた。
俺は、押さえようと必死になっているうちに水場にいた。
殺虫剤を注入した水場だ。
そこにケースを手放し、もう青ざめている手を見つめて呆然としていた。
ケースからはムースが飛び出てもじゃもじゃと動いている。
まっくろくろすけ……そっくりに見えた。
まっくろくろすけに、もっぷのように薄紫の触手を生やした感じ。
目が、霞んできた。
即効性なんてレベルじゃないな…この毒。
即死性、とでも言うか?
俺はもう動けなかった。
あとは重力なりなんなりで転倒するのがオチだ。
多分夢の中の俺の意識と肉体はもう死んでいる。
刺された瞬間に、死んだはずだ。
しかしこの夢を俯瞰している俺はまだこの世界を見ることが出来ていた。
もじゃもじゃは自ら排水溝に身を投じた。
あとに残ったのは、ケースを手放した姿で固まっている俺と、一週間の総集編をやっている長寿番組の音だけだった。
母もいつの間にかテレビ観賞に戻っているし、父はしばらく部屋からでてきそうにない。
祖母も一緒になってテレビを見ているから、誰かがトイレに立つとかしない限り気付かれることはない。
そんな状態で、夢の中の俺の世界は幕を閉じた。
 
- – - – - – - – - -
 
現実です。
漢検受けて帰ってきて失意の中で眠りについたらこんな夢を見ました。
マジで気持ち悪かった。何あれ。
特に最後、もじゃもじゃなんか最悪。
 
久々に完結した夢を見たけどこれは酷い。
夢見が悪い。文字通り。
 
さて…気分が晴れないわけだが…何やって晴らそうかな(‘∀`)

- 真昼の昼寝の夢 - Act.2

部屋に入りすぐに扉を閉め切り一対一にする。
今まで蜘蛛とは何度も戦ってきた部屋だ。夏場には網戸の隙間からうにゅうにゅと入ってくるらしい。
しかし、今回は飛行タイプ。
蝿のようなほぼ無害な虫は扉をあけて台所方面へと解放させ処理は母が勝手にやっていた。
何でだろう、今回、そうしなかったのは。
一対一に自ら持ち込んだ。
そしてヤツが俺に向かって飛んできた。
猪突猛進とはこのことか。
もっとも、猪ではないが。
蝿叩きを上段に構え、叩き付けた。
ヤツはエネルギーの変化によって運動エネルギーをその身に託し床に直撃した。
何…、なんだこいつ…今のを喰らって生きてる…っ!?
だめだこいつ…早く何とかしないと…。とか有名漫画の台詞が出てきてしまうぐらい焦った。
すぐに何故か近くにあった一番小さいサイズの空き缶を手に取り、ゆっくりと負傷しながら歩いていたヤツのそばに置いてやる。
…誘導作戦。
夏場蜘蛛と戦うときに良く使う手だ。
蜘蛛の傍にそっと空きペットボトルの入り口を向けて置いてやる。
すると何故か蜘蛛は中に入ってゆく。
あとはまあ、隙を突いて入り口と床の空間に閉じ込めちまうのもいい。
蜘蛛はペットボトルの側面は普通に登って行くから自分から中に入る。
すぐにペットボトルを通常置くように持ち直し蓋を閉めれば蜘蛛入りペットの完成。
これは使える手であるが、今回は体長約6cmの得体の知れない蟲にしかも空き缶であるから成功するかは分からないし密閉できないためにこの手は失敗だったと悟った。
空き缶の中に蟲が入る。
空き缶の口の部分は小さいのによくあの蜘蛛腹が入ったな、と今思うが夢なので気にしない。
空き缶を縦に戻し閉じ込める。
カナブンの足じゃあ、登って来れない空き缶の側面だ。飛ばない限り大丈夫と思う。
しかし俺はそれで安心せず近くにあったガチャポンの丸いケースを手に取った。
そして、ここからがヤツの本領だったわけだ。
ヤツは空き缶から這い出てきていた。
嘘だろ!?アイツの足はカナブンだろう?登れるはずがない!
すぐにガチャポンのケースを使い閉じ込めることに成功した。
気色悪い。閉じ込めるとき触っちまうかと思って必死に避けてたぞ…。
ガチャポンのケースはしっかり閉じれば非常に強い。
一部の蟲程度の力ではどうにもならないだろう。
効くかどうかはわからないがガチャポンのケースに空いている小さな穴から殺虫剤を入れてみようと思い台所に向かった。
「母さん、殺虫剤どこ?」
「ガスコンロの下の棚ー」
サングラスの司会者がテレビに映っていた。
「何か出たの?」
「これ」
そう言って虫大っ嫌いな母にガチャポンのケースを見せた。
「ぎゃあああ!!」
殺虫剤の付属品である細い管を噴射口に装着し穴にその先端を突っ込んで噴射した。
あまり持って居たくないものだったため台所の水場に置いてしばらく放置。
よし、効いてる効いてる。
カサカサ…ブーン……ブーン…カサ…ビクッ…チーン
流石“緊張売る”。強い。
さて、捨てるか…とベランダの燃えるごみゴミ袋の中に隔離しようとベランダに出ようとした瞬間だった。
パキン、とケースの形が歪む音がした。
 
Act.3へ続く

- 真昼の昼寝の夢 - Act.1

――昼下がり。
 
そのとき、父はまだプーではなくて母も普通に働けていた時期だった。
休日のようで二人とも家で過ごしていた。
 
俺は少し暑かったのだろう、窓を開けて読書をしてた。
部屋は夢であるからして結構広い部屋になっていた。現実の4畳半とは大違いだった。
そのときである。
カナブン(コガネムシ)のような羽音。…いや比喩なんかではない、そのままカナブンだった。
見た目もそうであるから別にどうって思うことも無かったのだが、そのカナブンが部屋に入ってきていて俺の読んでいる本に着地した。
…思わず、本を投げ捨てた。
カナブンはまた飛び立ち部屋を縦横無尽に飛び始めた。
なんだあれは…!あんなカナブン見たことない!
紫色の光を放つ独特の色彩、カナブンでは持ち得ない長い足、その翼は、蜂のようだった。
 
俺とカナブンの戦闘が始まった。
 
そのカナブンは蜂のように気性が荒く速く強かった。
俺は夢だからこそ部屋にあった金属の長い棒を手にとって何度も叩きつけようと振り回していた。
俺の部屋荒れることなどお構いなしだ。近所迷惑この上なかったことだろう。
その音に、隣の部屋の父が反応した。
普段絶対に俺の部屋には自主的に入ってくることの無い父が俺の部屋に入ってきた。
そしてカナブンが父に向かって加速した。
「避け――!」
俺の叫びが届くよりも速くカナブンが父に到達する。
だが、夢の中の父は、強かった。
向かってきたカナブンを素手で叩き付けた。
叩かれたカナブンは箪笥に直撃しつつもなんとか体勢を整え一旦休戦とばかりに部屋のどこかへ隠れてしまった。
「見たことないカナブンだったな。なんだあれ」
「窓開けてたら入ってきた蟲。それに、カナブンじゃない」
「入ってくる蟲はよく居るな…。…カナブンじゃないっつったってあの飛ぶ音はカナブンだろ?
あの紫の光沢、長い足、蜂のような翼、そして大きく膨らんだ蜘蛛のような腹部。
「気持ち悪…」
父は、機嫌の良いときは気さくなおっさんなのだが…今はもうその面影すらない。
懐かしさに浸っている第三者的な俺自身。
いや、この夢自体を俯瞰している俺。
はっ…シリアスな空気は嫌いなんだ。ヤメだ。もう昔の父が戻ってくる可能性は低いんだから。
「んで?何の用さ」
「ああ、ちょっとな」
PCの操作が分からないらしい。少し昔にはあったことだ。
カナブンも休戦と隠れたわけだし、俺も一時休戦としてやろう。
 
さくっと父の質問に答えた夢の中の俺。何だ、コマンドプロンプト開いて何やったあんた。
さて、…この扉を開いたらゴングが鳴る。
入った瞬間に目に攻撃を仕掛けてくるかもしれないし、隠れて隙を突いて来るかも知れない。
武器は蝿叩きと鉄の棒の二刀流。
幸い夢の中の部屋は広いし散らかるものが少なかったため暴れてもとくに障害はない。
にしても、あの蟲は一体なんだ…?
紫(し)光沢、長足、蜂翼(ほうよく)、蜘蛛腹(くもばら)…。
本に着地した一瞬ではそれだけしか分からなかった。
もっとおぞましく禍々しい容姿をしているのかもしれない。
 
そして、俺は部屋に踏み込んだ。
 
Act.2へ続く
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